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この日だけ2月 16日 木 .
マウイ日記をつけようと思っていたのですが、どうにもブラウザが重く「み江さんのツイートを読む」「ハワイの魚の名前を検索する」くらいしかウェブが用をなさず、1日で終わってしまいました。もうとっくに帰国しています。

休むための旅行というのははじめてでした。これまでは予定を詰めまくってステキ風景や建築をなるべくたくさん見る、という貧乏根性まるだし旅行ばかりしてきたので超新鮮でした。

マウイ最大のすばらしさは天気です。
あたたかいのにカラッとしていて、
朝さっくり起きれて、夜も快眠。
日本にいるより、心なしか仕事も捗ります。
なんと理想の外オフィスは、マウイにありました!
わー! て、うれしいような、うれしくないような。

この素晴らしい気候を
なんとか日本に持ち帰れないものでしょうか……。

いちおう本気で言っています。

かっこよく設えをマウイ化しても、しょせん日本の気候。テラスメシをたべても満足度はたいして高くありません。

最近はフリーアドレスやシェアハウスというように”計画”から生活の質を上げたり、仕事の効率化やコミュニケーションの活性化を促そう、という空間が話題になっています。しかし建物で人間のモチベーションを上げるには、配置や運営形態はさておき、そもそもの建物の性能、特に温熱環境を上げることがストレートに効果的、という実感があります。

このノマドの時代だからこそ、オフィスではなく家という基盤の性能が大事になる気もしています。オフィスに通わない前提で考えると、外オフィスはそれこそノマドなので、理想の環境を自分で探して取捨選択すれば大丈夫です。しかし追い込まれるとほとんど家によりつかないノラ野郎(=私)であっても、朝起きられるかどうかはかなり個人的な生産性やクオリティオブライフにつながります。

これまでにかっこよくて性能もいい住宅を取材し「朝起きるのがつらくなくなりました」という言葉を耳にして、何度心から羨ましいと思ったことか。

そこで観念的動機ではなく、個人の快適さを追求する「ぬくくて快適な家」を”京都”に増やしたい、とかそんなことを考えています。なぜ京都か? 「寒さ」「暑さ」が明確な欠点となっている街だからです。その割には「夏暑く、冬寒い家」が満載です。

京都に暮らしていた当時、温熱環境がでたらめな家に住んでいました。これはしかし、もしかしたら、不便をかこつことが格好よさの裏返しで、土間から中庭までツーツーで「でも涼しそうでしょ」という「京都の美意識(偏見)」に惑わされていただけのような気もします。

昨年、東日本大震災の後「ぽむファンド」立ち上げ会議なるものを京都で非公式に開きました。「ぽむファンド」とは京都の戸建改修に、震災をきっかけに重要とされそうな防災の性能をからめ、共同出資で古い家をバリューアップし、賃貸物件にしてほそぼそと投資を回収する、というもの。わりと反射的な思いつきでした。たかぎが銀閣寺に家を購入したことをきっかけに京都の戸建て住宅の改修に興味が湧いて開催したものです。

その後「土間の家」や「Chobo」といった古い町家をDIY的に、柱や壁の補修も含めた本格的な自主改修をしている若者たちに出会い、自主改修の可能性に目を開かれたりしたりもしたのですが、結局何事もなく1年経ち、たかぎの戸建て改修も「ぽむファンド」も進まず今に至るのです……。

しかし昨年暮れに「Casa BRUTUS」の取材で鎌倉パッシブハウスや北海道の家を取材したりするうちに「これを京都でできないのかなあ」という願望がふつふつと湧いてきました。いずれも原理はけっこう単純で、建物のまわりをぐるりと分厚い断熱材でかこみ、窓の性能をあげ、自然の力で給排気する、というもの。断熱や気密のためのちょっと特殊な素材や大工技術が必要とはいえ、思ったより単純で効果的。ついでに建築の固有名詞を覚えると街の見方が変わったりするのと同じように、環境性能をあげるための原理がそれなりにわかると建築の見方も変わって面白いです。

特に可能性を感じたのは断熱改修です。既存不適格ながら、おもしろい&寒くてむし暑い戸建てが多い京都にはかなり有効なのではないかと考えた次第。

そんなわけで……

・温熱環境や構造の性能が高い
・賃貸で改修OK
・すてき

このあたりの条件を満たした家を増やす、というイメージをもやっと抱きながら京都での活動を進めることを考えているのです。(この項もつづくかもしれません)



この日だけ2月 9日 木 .
ハワイのマウイ島に来ています。たのしくゆるんでいます。

浜。





ボリューミーなめし。





立派すぎるコンドミニアム。



巨・オーブンを活用するため、肉を焼くことにしました(グロ注意)。



手塩にかけて。



中に味をつけた野菜を詰める。



糸でしばる。



焼く。肉汁を受けながら野菜も焼く。



できた。



み江さんすげえ。



しかしできあがりは驚くべき硬さ。ナイフも通らないタイヤのような肉! これは元の肉の素質に由来するもので、手塩にかけて育てても走らない馬のようなものだと考えて諦めることにしました(報告おわり)。



この日だけ2月 6日 月 .
ある論調に染まること。思い込みで記事を書くこと。こうしたことが苦手なので、わりとニュートラルな媒体で、客観的な記事というものを書く仕事を選んでやってきたつもりである。自分の意見などという、取るに足らないものはあんまし入れないでよいだろうと。

しかし、そんなニュートラルさというのは思い込みにすぎないのではないかと最近思うようになりました。所詮寄らば大樹の影。その媒体のあるようなないような論調に寄り添えば、最終的な責任を取らないで済ませることができる。考えないで済むのは楽なのだ。たぶん、サボってきただけ。

その大樹が大樹であるうちは、そういう仕事の仕方でも全然いいのだけども、もし倒れたら、頼れるものは何になるのか。

音楽ソフトとおなじように文書もどんどんバラバラになり、ひとつのフォルダにバインドされるものではなく、タグ付けされて整理されるようになるだろう。そこで問われるのは、どんなバインダに入っていたかではない。

文書のバラ売りが進めば進むほど組織的なバインダの力は薄まって、結局個としてどうなの、ということが問われてしまうのだ。(つづく、かもしれない)



この日だけ2月 3日 金 .
この1月号から日本建築学会の定期刊行誌『建築雑誌』の文章まとめをちょくちょく手伝ってます。「編集方針」にある「建築という『学・術』をめぐる広範なアソシエーションの探求」の言葉通り、分野を横断し拡張する特集や記事がつくられており、いちいち聴き応え、まとめごたえがあります。

1月号は出てからだいぶ経ってしまったので最近届いた2月号のことを振り返ってみます。「津波のサイエンス/エンジニアリング」という特集です。

東日本大震災の津波を報じる映像の数々や、建物が流されて土台だけになってしまった地面をみて、わたしは建築の限界を感じたものです。震災の後「津波から地域を守る防潮堤などをつくるのは我々の仕事ではない」と建築の無力さをはっきり語る建築家もおり、そこにもやっと疑問を感じつつも、津波のことは「それはさておき」と視野の範疇から外して見ていたのが正直なところです。

しかし建築ボケした私の思い込みは、最初と最後、2本の座談会を聞かせてもらって氷解しました。津波はこれまで建築の世界でスルーされ気味だっただけ。しっかり建築学の範疇です。

まとめ作業の中で印象に残った2つのポイントを要約。

・2005年に登場した、津波避難ビルのガイドライン。これが現状唯一の建築物に対する耐津波設計指針。漂流物への対応が考えられてないなど再考の余地あり。かつ、あくまで指針なので今ある津波避難ビルがこの基準を満たしてるわけではない。(それどころか、通常の耐震基準すらあやしいという発表もあったね……報道発表資料「津波避難ビル等」に関する実態調査結果について)まあいろいろやれる余地あり。

・レベル1(100年に一度レベルの津波)には防災、レベル2(1000年に一度レベルの津波)には減災、という津波対策基準が公になる予定。1000年に一度レベルのすごい津波は防潮堤を超えてくるので、そこは建築物も頑張らないとならない。”粘り方”や”受け流し方”は考える余地あり。

なお巻頭座談会は土木工学の研究者/実務家が中心で、寄稿されている方も土木工学や地震工学の研究者がほとんど。その人選意図は巻頭言参照なのですが、雑誌の編集方針に掲げられた「建築という『学・術』をめぐる広範なアソシエーションの探求」をさっさと実践なされているのがすごいなと思う次第です。




この日だけ2月 1日 水 .
先日『大阪人』の連載「オオサカ・インストラクチャー」のための個人的な取材で、水道や防災や高潮対策のことなどを教えてくれる資料館をいくつかめぐりました。

どれも面白くためになったのですが中でも一番びっくりしたのが「津波・高潮ステーション」です。ここは過去に室戸台風やらジェーン台風やらでさんざんな目に遭った大阪の苦闘とその対策を紹介し、防災意識を促そうという施設。コンセプトが明快です。

メインアトラクションは「ダイナキューブ〜津波災害体感シアター〜」です。前方左右の壁と床に投影された挙句に床も振動する臨場感高すぎの映像で津波の恐怖を味わうという「自動車免許教習所ビデオ系」のトラウマシアターです。よくできてます。

しかしいちばんびっくりしたのは「水の都永遠に 毛馬排水機場」というプチ映像です。毛馬排水機場というのは淀川から大川が分岐するところに設置され、大川に流れ込んだ水の一部を淀川に戻すというそれだけの機能を持つ、ものすごく単純なことをするための装置です。しかしその機構は猛烈にものものしい! (しかもたまにしか働かない!)

大阪府・毛馬排水機場の解説より



この明快な図のように大阪の高潮対策の要点は、毛馬排水機場で市街地に入る水量をコントロールしつつ、安治川・尻無川・木津川の3つのものものしい水門。(これもたまにしか働かない!)で高潮をせき止める、という仕組みのようです。

建築分野の周辺に十ン年、大阪の構造物に関する連載を3〜4年やってようやく理解したこの構造。荒川の下流が人工的につくられたものだと知ったときや、「白髭防災拠点」を案内してもらったときくらい驚いたのでした。


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さんざん放ったらかしの「ぽむ日記」ですが……折角スペースがあるので、こんなふうに、たまには目から落ちたウロコの話を更新しようと思ってます。また飽きるかもしんないけど。




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