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この日だけ7月 8日 土 .


追悼・植田正治 その2

 わかりやすい写真なので、モダニズムがどうとか抽象性がオブジェクトがと小理屈もつけやすいのですが、このじいさんはそれよりもギャル男(=感性がギャルみたいな男)の部分が楽しいと思います。「へんな形」とか「おもしろい構図」などの楽しいことにしか興味がなかったり、ものを見るセンスが魔女みたいだったりするところです。

 「ぼくにとって人物はオブジェだからモデルは誰でもいいんだ」とか言っているわりには、そのモデルだからこそ撮れたような写真ばかりだし、ただおもしろい形のためだけに置かれた草や傘や海なのに、それらの本性がつい出ちゃっているかんじです。本人はそんなの狙ってないはずですけどね。たぶん目のカンがとてもよくて、神さまの作ったものでも人間の作ったものでも、形を見たら中身も見えちゃう類の人じゃなかったかと思います。たまにいるでしょうそういう魔女系の人。見ただけで鳥とか帽子の人生がわかってしまいそうな人。
 だから鼻が詰まるぐらい人工的なのに、ある意味リアリズムよりもリアル。作り込むことで、対象は逆に作者から遠くへ放り出されて天然に帰ります。

 なんだか「オヤジによる妹島和世評」みたいなことを言っちゃってますが、このカメラマンのしていることは、徹底した観察と解釈ようするに対象化、というごくふつうの作業にすぎません。ギャル男はときどき歴史を変えます。倉俣史朗などがその例です。

 こういう態度も含めて、飄々として、粋で、カッコイイ写真でした。写真にはとくに興味のないぽむですが、この人は別格だったのでした。ぜひモデルになって、へんな物を持たされたりへんなポーズを取らされたりしたかったものです。