ぽむ日記
 なるべく everyday
 使い方・リンク方法
ぽむ日記過去ログ
ぽむ日記サーチ
この日だけ5月 1日 火 .
拳血駆少年河井さんのご厚意により、昨年完成した氏の作品『上京のデイケアセンター』を見学させていただきました。建築文化2000年10月号などにも掲載されていたものですが、雑誌記事では伝わらないライブな魅力がいっぱいだったので、この場でご紹介します。

この建物のおもしろいところは、「西陣の町家を老人ケア施設として再生」というプログラムです。そこに河井さんの意外なまでの(失礼!)腕の良さが手伝って、「かっこいいけどもヒューマンスケール」で、「スッキリしているけども陰影のある」という、ぽむ企画をしてもツッコミどころが見あたらない、よい建物に仕上がっていました。

既存のたてものは、「村上もとかのマンガで背景に使われた(河井さん・談)」というだけあって、絵になる医院です。そして裏手にある建築年代不明の蔵や、表のしだれ桜に、樹木の茂る中庭など、つぶすには惜しいというかおそれ多くて手を出せないものがごろごろしています。周辺も西陣のまちづくり地区としてこのとおり保全がなされている区域です。真向かいには建築少年の元アジトが、となりは西陣織組合会長さんのお宅が、斜め向かいには町家倶楽部のアジトも見えます。なにやら強力な背後の関係性が見え隠れする場所。それだけに(?)、とても丁寧に作られている建物です。

三階のハイサイドライトを二階のガラス床を通して一階まで伝えるという鉛直方向の光の扱い方や、両側から蔵を貫入させた階段室などは、演出効果まんてんさすが元暴走族バリバリだぜ!といった趣なのですが、一方で天井高や明るさの変化によって空間に適度なムラができており、利用する人によけいな緊張感を与えない親切設計です。ほかにも低い目線にもうけられたちょっとした小窓などなど、そこら中工夫だらけです。屋上テラスもこのとおりオシャレで、見晴らし抜群。大文字も見えるゼイタク空間です。躙り口つきの茶室もありました。まるでゲストハウスのようですね。 100%バリアフリーですが、メリハリの利いたシャープな構成のおかげで冗長さは感じられません。

雑誌撮影時にはすでにいろいろと持ち込まれており、京大の学生など‘息のかかった者’に撤去させたという、そのアナーキーな使われ方について解説します。オープン1年ほど経つ建物は、見事なまでに「使われ」て、いい按配にこなれております。内部は絨毯や旅館にありそうなごついデーブルや動物の置物や衝立や唐傘といったお宝でディスプレイされております。これらはオーナーが蔵から見つけだしたりして持ち込んでいるものだそうです。天井高の低めな一階に、ご近所のお年寄りと思われる人々が寄り合っています。小柄なオバチャンが短パンにカッパという機能的な姿で立ち働いているのですが、その方がオーナーの娘さんで、主任看護婦さんというので驚きましたよ。サービス専用の空間はなく、二階のキッチンもガラス越しにオープン。主客が混在した、威圧感や気取りのない施設です。