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この日だけ5月 28日 木 .


このごろ縁あって逢坂山のふもとをよく通ります。そのとおり蝉丸が住んでいたという場所です。そうあの100人の中でなぜか小学生人気ナンバーワンの。近くには蝉丸神社や蝉丸トンネルというのもあります。こんなふうに歴史や文学史やへたすると神話の有名人にまつわるサムシングがなにげなくそこいらじゅうにあるのが畿内のすごいところです。やばんな東夷にはびっくりですよ。いまだに。ちなみに蝉丸の歌は百人一首における私の心のベスト2です。袖振り合うも他生の縁、ていう壮大な宇宙観を日本語ラップのリズムで刻んだミニマルミュージックのような一首。ところで蝉丸は坊主じゃないってほんとですか。

私の心の百人一首ザべリーベストは僅差でこれ。

わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 喜撰

なんという突き抜けた明るさと切なさと俺とお前と大五郎。人はいふなりとか言って他人事のまま。ただ「しかぞすむ」。しかぞってどうなんだ。しかぞって。本当に世を憂いているのか。本当は楽しくよろしくやってるのか。返してほしい言葉は「そのとおりですね」なのか「そんなことありませんよ」なのか。ただ「しかぞすむ」。これをかっこいいと思ってた日本人がかっこいい。「しかぞすむ」と「エルゴスム」は似ている。

さて喜撰といえば宇治茶の銘柄です。宇治山の喜撰法師にちなんでいます。黒船来航の折「たった四はいで夜も眠れず」と詠まれたことでも知られています。

そしてクロフネといえば競走馬です。2001年、それまで内国産馬しか出走できなかった日本ダービーが外国産馬にも「開国」されることになりました。世代の最強馬を決める、誰もがあこがれる一戦がガイジン参加OKになったわけです。なんというか大相撲に外国人力士を入れるようなものです。この開放元年のダービーに照準を合わせ、持ち馬の中でいちばん有望なアメリカ生まれの馬を育てた馬主がいました。その名もクロフネです。まあ毛色は白いのだが。クロフネはこの名を背負って見事にダービー出走まで登りつめ、2番人気に支持されました。みんな黒船に襲来されたかったのですね。クロフネはダービーこそ敗れたものの、その後ダートで前例のない強さを見せつけて日本人の度肝を抜き、その名に負けない仕事をしました。さらに後年この馬主は、たくさんいるクロフネの仔の一頭にスリープレスナイト(夜も眠れず)という名前を与えてG1を獲りました。夢のある命名センスもいいし、夢で終わらせない相馬眼と引きの強さもすごいですね。

今週末は日本ダービーです。でもみ江さんは「世代ナンバーワン決定戦」のダービーよりもその日の最終レース「最強のどんくさい馬決定戦」の目黒記念のほうが楽しみだったりします。