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この日だけ7月 15日 水 .


GENETOの山中コージさんから案内をいただいて、15年ぶりに祇園祭に繰り出してみたよ。

GENETOさんやその仲間たちが、ふだんはアンティークの着物を売ってるお店を使って、毎回テーマを決めて作品展示と飲み会を同時にやるっていう遊びを時々催している。その名もAS2。「アートを肴に酒を飲む」の略。Sを2個重ねると問題が生じるからね。ここに初めてお邪魔した。東京の人向けにいちおう解説すると、京都は東京みたいになんかのオープニングパーテーとかそういうのがないので、みんなこのようにして社交というか遊びの場を発明するところから始めるわけです。

今回のテーマは酒器の展示と販売。9人の作家さんが出品している。清水友惠さん(読みはきよみずだよ)の青い馬上杯を買う。氷裂貫入釉といって、貫入つまり釉薬のピキピキが無数に入って、幾何学文様のようなそうでないような、薔薇の花のような、キュビズム絵画の画面分割みたいなふしぎな紋を一面に形成していて、とても美しい。焼いたあとの釉薬と土の収縮がポイントらしい。器を物色していたら吉永健一さんが現れる。

そんで器を買うとそこにお酒を注いでくれる。何この気のきいた趣向。表の縁台に座って飲む。場所は六角室町ていう祇園祭がもっとも賑わうエリア。浴衣で行き交う人々。提灯のあかり。夜風。吉永さんが長谷川逸子事務所時代とシーラカンス時代のゆかいな昔話をしてくれる。そんでAS2広報の原さんと、タケヤマアトリエの竹山さんと、GENETO木工部隊の辻井さん白さんと、テキスタイルのケイタさんと、ジュエリーの中村ゆき子さんと、着物屋さんオーナーの坂梨さんと、レーサーのカワダさんに会う。忘れないうちおぼえがき。何だこの楽しい遊びは。

路上には鉾が出て、町家は家宝をご開帳して、お祭りの期間は都市全体が展示空間になるわけですが、お宝は屏風絵や人形や織物だけじゃなくいろんなものがある。たとえば古いボルボなどである。と吉永さんに教わったので見てみた。たしかにふだんは固く閉ざされているであろうそれはりっぱな町家の玄関が開いていて、紋が染められたお祭り用の暖簾の内側に、とても古そうなかっちょええボルボが控えめに、だが明らかに「展示」されている。車の前には「中に立ち入らないでください」と書かれているけれども、でもその横に「ご用の方は呼び鈴を」のような文面があって、お好きな人とお話しするのにやぶさかでない意向が控えめに示されている。京都の人はツンデレだなあ。

祇園祭のあの開放感はヴァカンスシーズンの地中海のリゾートみたいですね。見世の前に縁台を出して知己と酒を飲む。食べ物屋さんは路上にテーブルを広げてオープンテラス状態になっている。ふだんお馴染みさんしか相手にしない京都人が珍しく誰にでも愛想良くしている。そんなに楽しいなら年中そうすればいいと思うのだが、絶対しない。そういう慣わし。そういう美意識。