ぽむ日記
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この日だけ6月 1日 水 .


ボランティアバスに乗って岩手の大槌町に行ったので報告。自分なら現地に行った人に何を聞きたいかなあと思って書いてたら長くなった。分けます。その1。

仕事は2日間河原の掃除でした。大槌川という町の中心の川。河口から2kmぐらいのところだけど、家は浸水していて大量のがれきが流れついている。この河川敷一面に菜の花を植えるそうだ。

重機はすでに入っていて捜索も済んでいて、大きながれきは除かれているんだが、ここから先は人力で取り除くしかない。泥にいろんなものが混然一体となって混ざっている。建材はもちろん、レモン絞り器、北斗の拳コミックス、3時20分で止まった時計、500mほど下流の病院から流れてきたCT写真。ぜんぶ粉々になっていてあまり原形をとどめているものがない。衣類や紙はもう風化しかけている。でも若い女の子の化粧箱がまるごと出てきた。ヘアピンやマスカラやマニキュアと一緒に、星の砂の小ビンが入ってた。ビンはこなごなに割れていた。彼女にとっては宝物の箱。

かつて意味のあったものが全部小さく細かくなっていて、壊れたのは建物じゃなくて生活だったことを知る。それら人の生きた跡と同じぐらい木の枝も埋まっている。自然物と人工物の区別がよくわからなくなる。

河原には花が手向けてある。ここで人生を終えた人も多かっただろう。かつて何かだったものの破片だけが大量に残っている。重機が入って一見きれいになったように見えるけど。

「地球の歩き方様」とマジックで書かれたレーキをボラセンで借りて、掻いて拾うのくり返し。てごろな「きのぼう」をてにいれたのでぶきにする。すぐにあちこちに山ができる。プラでもグラスウールでも燃えるものは火をつけて端から燃やす。依頼者であるらしい近所のKさんがお茶を差し入れてくれる。

地域一帯に干物工場というか磯のにおいを8倍濃縮した感じのにおいがする。防塵マスクをしていてもすきまからまだにおう。見えるところの魚は片付けられていたんだけどね。がれきを燃やす煙のにおいと混ざる。

掘っても掘っても何かが出る。30人近くで一日作業をしても野球場の広さも終わらない。一度で済む作業ではなくて、雨が降って泥が流れたら、重機で掘り返して、また同じ作業をする。何度か繰り返してようやく菜の花の種を蒔ける。泥をかぶった田んぼや畑の面積を考えて気が遠くなる。

この菜の花プロジェクトを誰がどう運営してるのかは不明。Kさんが一人汗を流して取り組んでいるということしか。取材不足ですみません。役場ごと流されて町長さんも亡くなった町だし、行政主導で行われているとも思えない。「菜の花播種予定地 大槌町地域整備課」という看板はあるけど、どうも近所のおじちゃんが一人で進めているような雰囲気なのです。

まだ見つかっていない人がたくさんいて、片付いてないお宅もたくさんあるなかで、みんなのために一人で花を植えるというのは強い心の要ることなんじゃないかと思う。乗り越えなければいけないことも多い気がする、自分や家族に関する不安だけじゃなくて、被災者格差みたいなものとかさ。花より明日の飯だろと思う人もいるだろうし。下衆の勘ぐりかもしれないけど。

菜の花が咲いたらきれいだろうな。きっと慰霊と再生の象徴になる。来年見に来よう。