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この日だけ7月 17日 金 .
お久しぶりです。

ブックショップ、オープンしました。

先週の7/9には少し盛大にオープニングパーティーなども。そのパーティーに五十嵐隊長がやってきて、ブックショップについて日記で詳しく紹介してくれました。ありがてえことです。その内容を補足するような感じで書こうかな。

新しくCKRあらためクラーソン・コイヴィスト・ルーネの手により生まれ変わったビルは、スフェラ・ビルという名前です。ウェブサイトはこちら。ワタシが作りました。わかりやすさとオサレ感を兼ね備えた優良サイト(のつもり)ですが、ただの紹介サイトなんで別に見ても面白くありません今のところ。そのうち本の紹介とかしようと思ってます。

で、かのブックショップは、「スフェラ・アーカイヴ」という名前です。「スフェラ・ブックス」か「スフェラ・アーカイヴ」のどっちかから選べと言われ、何となくアーカイヴを選んでしまったのです。が、わかりづらい。単体のお店だったらこれでもいいけど、複合店舗だとお客さんが本屋さんの存在に気づかない。これは失敗しました。

「スフェラ・アーカイヴ」の店番として、ほぼ常時山崎かワタシかどっちかがいます。でもどっちもいるという状況はあまりない。仲が悪い二人もいると大げさな感じになるので敢えて一人にしているのです。雇われママ&マスター(非夫婦派)としてカウンターの向こう側でカタカタとパソコンに向かってます。

「本屋の雇われママ」というのは、ワタシが『Casa BRUTUS』の地味なページで細々と連載してるコーナーのプロフィールに入れているもの。担当編集さんが直感で考えたフレーズですが、実に言い得て妙。我々の仕事は、本を選んだり、仕入れたりして、それを売るのがメインですが、ギャラリーの監視も仕事。白い壁についた足跡を消すのも仕事。まずは空間を管理するというのが業務内容に入っています。本の仕入れについては、かなりの裁量権は与えられてますが、それでも多少ビルのコンセプトに合わせた雰囲気のショップにすることも必要。まさに雇われママです。

しかしシロウトがいきなり本屋をやるというのは、かなり不自然なことだと思います。その経緯は、まあ以前にも書いたと思いますが、大島哲蔵さんやるはずだったのが亡くなってしまい、それで話が降ってきたというものです。

正式にブックショップをやるってことに決定したのが二月、それから俄勉強で本の仕入れを勉強して、無理矢理本屋さんの体裁を作ったけど、まあ、まだまだかな。

「スフェラ・アーカイヴ」は巷の本屋さんに比べるとめちゃくちゃ本が少ない。これは当然で、棚が元々面積の割にすごく少ない。しかしそれ以上に仕入れ条件の問題が大きいのです。

基本的に本屋さんは、問屋さんから、返却可能という条件で本を仕入れています。つまり借りてるんですね。だから少ないリスクで、たくさんの本でお店を埋め尽くすことができるのです。しかしここは、問屋さんを通していない。なぜならば、そこを介して本を仕入れる契約をもらうためには多額の保証金を詰まないといけないのです。それこそン百万〜ン千万という単位です。それはどう考えても無理。だから新刊とか雑誌をバカスカ入れることは出来ないのです。

取次を通さない場合、どうやって本を仕入れるかというと、直販で入れることになります。出版社の販売部に電話して、かるく交渉&取引条件を聞くわけです。多くの場合は買い切りです。仕入れはさらに慎重になります。で、出版社によっては、速攻で却下されることも多いです。大手や新聞社系は無理。小さいところでも運営方針によっては難しい。時によってはさんざんイヤミを言われたりするという具合です。(このへんの辛くめんどくさい作業はすべて山崎がやっている。とても偉い。)

だから慎重に、腐らないクオリティを持った本を、少しずつ少しずつ入れてるわけであります。

この辺は、いろんなウェブを見たり(プロジェットの店長さんや、INAXの本屋さん学芸出版社のカリスマ販売部社員さんの話が特に参考になった)あるいは永江朗さんの本を読んだり、三月書房のメルマガやらで知識を得たものです。

棚を構成したりするのはすごく面白いですね。階段を上がってきたらいきなりコールハースの「S,M,L,XL」が見える(つかみ)。雑誌(特にブルータス)の古本・バックナンバーを厳選して入れたりとか、結構工夫してやってます。雑誌はある期間が終わったら書店から消えちゃうので、その辺を逆利用しているのです。料理コーナーではBRUTUSの野菜特集(版元品切れ、ギリギリで入れられました)を置いたりとか。東京で仕入れた新古書や古本と、目利きの方々にセレクトしていただいたヒップなデザインブックがまぜこぜカオス。このへんは結構気に入っています。でもなあ、空間がまだまだいまいち本屋じゃないんだよなあ。いますごく、「本屋さん」に憧れています。今はなんだろう、ミュージアムショップかな。

 

なんというかお客さんに過度の緊張を強いる空間だろうなあと思うのです。お客さんが居るときはこっちもなんか緊張します。何回か平台の配置替えとかしたけど、もうちょっと棚が欲しいところですね。でも窓辺のスペースはかなり気持ち良いです。ビルのトレードマーク・葉っぱの模様のパンチングメタルごしに鴨川が見え、影がキレイに差し込みます。CKRあらためクラーソン・コイヴィスト・ルーネさん謹製の巨大一人用ソファを独占すればなかなかいい気分。



ビルが意外に見つけづらいとか、見つかっても雰囲気的に入りづらいとか、入ったところでどこがブックショップかわからないとか二重三重に敷居の高い、無駄に隠れ家感のあるお店ですが、それでもなおかつ訪れようという猛者は歓迎いたします。どうぞいらしてください。