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3月 24日 月 | ▲ . |
六原自治連合会刊行の『空き家の手帖』制作に関わりました。 1章 あなたの家、空き家にしていませんか? 2章 空き家を活用しましょう 3章 活用のノウハウ 4章 今日から始める空き家相続 編集、DTP、本文構成、本文イラスト、表紙デザインなどをぽむ企画が担当しています。 3/18(火)の京都新聞で紹介されました。 3/19(水)に東山開睛館(学区内の公立小中一貫校)で、地域向けのお披露目イベントがありました。 ↑日付を訂正しました。 ーーー この仕事は、非常におもしろかったです。何がおもしろかったのか、忘れないうちにまとめておこうと思います。 これは京都市東山区の「六原学区」有志の方々によるまちづくり組織「六原まちづくり委員会」の発案で生まれた、六原学区の住民に向けて、空き家の問題点と流通の大切さを訴えるブックレットです。3500部発行のうち約2000部は、六原学区全世帯に配布されます。 これ、ふつうは行政がつくるような冊子が、特定の地域の有志でつくられたという点が、まず着目すべきポイントかと思います。 なぜ六原学区が自らこのような冊子をつくるに至ったのか。背景に少し触れてみます。 六原学区とは、京都市東山区の中心部の、約2000世帯のエリアです。京都市東山区は空き家率が20%を超える地域(全国平均12.1%)で、京都市内でもっとも空き家率の高い区です。六原学区内にも200軒ほどの空き家があるといわれています。そんな状況を受けて2000年代から、地域と行政、および外郭団体の連携で、空き家対策が進められてきました。現在は京都市の「地域連携型空き家流通促進事業」モデル地区に選ばれるなど、空き家活用にかけては先端をいくと目されている地域です。 そんな中、2011年に発足した六原まちづくり委員会から「空き家対策は、まずは空き家の所有者に訴えかける必要がある」という声があがり、冊子制作へと話が展開したというわけです。 われわれは冊子制作にあたって呼んでいただいた、いわば六原学区が連携する「外郭団体」の1つです。京都女子大学、京都府建築士会、京都府不動産コンサルティング協会、京都市景観まちづくりセンター、HAPSといった、そうそうたる組織と横並びで「ぽむ企画」の名……。 制作にあたっては2013年8月から2014年2月まで、11回の会議やワークショップ、事例調査の機会が持たれました。われわれは、2013年9月30日の第2回の制作会議から参加しました。この制作会議を重ねながらつくるスタイルこそが、冊子の内容や表現を、よく練られたものへと導いたのではないでしょうか。なぜよかったか、その理由は大きく2つ。 1つは、制作メンバーが地域の方、建築、不動産、まちづくり、空き家マッチング等、さまざまな専門や視点が集まるバランスのよい構成だったことです。本文は、制作会議で各専門家にお話いただいたことをまとめ、続く会議でいわば監修にあたることをしていただくという形でつくっていったものです。そしてすばらしいのは専門家のみならず地域の方、対象読者と同じ目線の方に会議に参加いただくスタイル。複眼的な視点からのチェックを経て、要点が絞り込まれた文章へとブラッシュアップされています。 (冊子の制作会議に読者目線が入るというのは、女子高生向けのお菓子の開発の会議に女子高生を入れる的な、ようはマーケティングと製品開発を同時にやる方法の一種なんだと思いますが、こういうことを、いやらしくなくさらっとできるのは、地域発の取り組みだからですね) もう1つは、これは制作メンバー個々に由来するもののような気もしますが、冊子を誰に読ませたいか、どういう効果を期待したいか、というビジョンが最初から非常に明確だったことです。しかも制作会議を重ねてもまったくぶれない。たとえば最初の会議では「配った後、家にずっと置いておいてもらえるような冊子にしたい」と言われました。なぜか。そういう本にしておけば、空き家の所有者がその場で読まなくても「あの家、どうしよう」という話になったときに手にとってもらえるだろう。本人が読まなくても、親族の誰かに読んでもらえるかもしれないという理由です。表紙など本の佇まいは、こうしたお話をベースにしています。 ただ、この本はわかりやすさが重要になるので、表現にはかなり工夫が必要でした。 本文の構成は、最初に参加した制作会議のあとみ江さんがさらっと書いたこのようなラフが元になっています。 最初の会議で「話し言葉で表現し、親近感をもたせられないか。特に京ことばの優しい口調がよいのではないか」という提案をいただいたので、右ページに架空の家族「六原家」による会話がなされ、左ページで大学の先生「マチコ先生」や建築家「ケンさん」、不動産業の「フドウさん」などが解説をするという構成が生まれました。 右ページの六原家の会話は、ひとまずわれわれが書いてみたものの、2人ともあずまえびすなため、かなりトンチンカンな京ことばになっていたらしく、会議で盛大にツッコミが入れられた挙句、「地域の人たちに正しい京ことばになおしてもらうワークショップをしよう」という話に発展しました。われわれが京ことばがわからないことが、結果的に住民の方々を巻き込んだワークショップにつながりました。 また制作会議とは別に3度にわけて事例調査をし、建築家の垣内光司さんの指導で、住人が祖父から受け継いだ町家を自ら施工をして改修した「Do it yourself」や、RADの改修設計・ワークショップ監修で、専門家、芸術家など100人あまりの協力者の手で改修した「HAPS」など空き家改修事例を4つ(うち3軒は六原学区内)を紹介しています。これら記事や章ごとの末尾にあるコラムは、専門分野ごと制作メンバーで手分けして執筆。 ところでわれわれは六原まちづくり委員会の方々に「プロの方」と称されることが多かった気がします。「プロの方=素人クオリティとは一味ちがう成果物に仕立て上げる人」といった感じの、ばっくりした意味なのではないかと思われます。われわれは基本的には「編集」という作業をしているつもりでしたが、それほど一般的ではない「編集」という言葉が出てくることはありません。逆に「デザインをしてくれた」といわれた記憶はあります。ともあれ「プロの方」の専門領域というものは、あいまいで幅広いもののようで、われわれもそのように仕事をしました。 そういえば社会に出てから東京に引っ越す2005年までの間の京都時代も(そんなプロでもないのに)なんだかいろんなことをやっていたものでした。今まわりを見回しても、「建築家」とか「編集者」といった肩書きで、なんだかいろいろやってしまう人たちというのは多い気がします。こういうふうに認識が曖昧な状況を逆手に取って、一般的な役割分担や手順にこだわらないやり方ができるのは、地方という場所で仕事をする面白さの1つではないかという気もします。 3/18(火)京都新聞より。 |