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そうしている間も仕事はいちおうしていました。さいわい勤務時間も内容もかなり融通の効く仕事でしたので恵まれていたと思います。世の中には抗鬱薬飲みながらも毎日9時-5時といわず9時-9時とか10時-12時とかでおつとめを続けている人もたくさんいるわけだからほんとうにたいへんなことだと思います。 あいかわらず予備校で教えたり京都芸術デザイン専門学校で教えたりしています。書き仕事はもんのすごくアタマとカラダの体力を必要とするのでさぼらせてもらっています。 予備校仕事はそれまでの蓄積がありますから、アタマをすり減らす「新しいことを考える」をさほどしなくてすみましたし、なによりハタチ前後のまっすぐですなおなわかものと日常的に接触してたわいもない話をしたりするのは心身の健康にはよかったと思います。これが根性ねじ曲がったどすグレーの大人だったらそうもいきません。 専門学校では、なにしろ科目名からして文化研究訳すとカルチュラル・スタディーズ訳すとうさんくさいですので、なんだか申し訳ないぐらい好き放題やらせていただいています。3年目となる今年はえらそうにリテラシー教育という大義を掲げ、デザインを仕事にするうえで(というかふつうに仕事をするうえで)要るであろう読み書き力をつけるとかいう授業をやっています。予備校で小論文の授業やりながら文章指導のスキルなんかもそれなりに貯まってきたし、なによりいま自分が人に教えられることなどこれくらいしかないからです。 今年度前期のカリキュラムはこんなかんじです。ちなみに建築コースの2年生クラスで今年は20名。 ●課題1 好きなものについて話す あなたの好きなものやお気に入りについてスピーチをしてください。音楽、マンガ、お洋服、動物、ラーメン屋、人、場所、趣味、何でも構いません。あなたがいかにそれが好きか、どんなところが好きか、あなたにとってどれほど価値をもつものか。聞く人にどうやったらうまく伝わるか工夫してください。時間は最低3分間とします。原稿やメモを用意するのは構いませんが、棒読みは避けましょう。小道具を使うのは自由です。 これを全員やる。それだけだと間違いなく寝るので、聞き手にはそれ用のフォームを渡して、 ・要点のメモを取る ・話の内容に関する質問を考える ・話し方、内容などについてアドバイスをする これらの記入と提出を義務づける。そして質疑応答タイムを設けて全員に一回以上質問させる。 「考えを整理して話す」「人の話はちゃんと聞く」という初歩の初歩から始めます。お互いよく見知った仲なので、やる気のないスピーチにはけっこう容赦ないコメントが飛んだりします。なんか斎藤孝のパクリみたいですが言っとくが彼の著書は仕事で必要だった一冊しか読んだことないぞ。 ちなみにしょっぱなは私がやりました。競馬について話しました。「好きな馬は」「最高配当は」などのほか、「内国産馬はなぜサンデーサイレンス産駒に勝てないと思うか」というマニアックな質問をされました。 ●課題2 人物紹介記事を書く 二人一組でお互いにインタビューをし、相手を紹介する記事を書いてください。性格・習慣・趣味など何でもよいですから、何か一つ「この人の特徴はこれ!」という点を見つけて、そこを中心に書いてみましょう。 これは去年からやっています。質問力と応答力と編集力と表現力をまとめて鍛えられるべんりな課題です。 まずはインタビューというものを簡単に練習します。質問する側は相手の答えに応じて、さらに質問を展開させる。答える側は相手が何を話してほしいのか予想して、聞かれたこと以上のことを話してやる。これができていないと文章にしても厚みのないただのプロフィールになってしまうからです。 そんでその取材メモをもとにA41枚ぐらいの記事を書きます。新聞とか雑誌なんかでよくある人物紹介コラムみたいなやつね。切り口を一点にバッサリ絞ることによって密度が濃くなり、逆に説得力が増すということを納得してもらう。 書けたら赤ペンを持って回し読みし、お互いに添削・批評します。何がよいのか具体的にほめる。何がまずいのか具体的に指摘して、どうしたらもっとよくなるのかアドバイスする。 見知ったクラスメイトのことなので、「○○君の意外な一面を知りました」というコメントがけっこうあります。言葉には対象の見え方を変える力がある(そしてそういう力のある言葉を批評と呼ぶ)ということを感じとってもらえたらしめしめです。 最後は赤ペンの入りまくった状態のものを全員ぶんコピーして配ります。たのしいクラス文集のできあがりです。 ちなみに私も生徒と一緒にインタビューしたりされたり書いたり書かれたりしました。でないとしめしがつかないからです。ある生徒は私の手書き原稿を読んで「先生は字がきれいなイメージがありましたが裏切られました」というコメントをくれました。 ●課題3 建築批評入門 「バウハウス・デッサウ校舎」に関するドキュメンタリー映像を観て、この建築について論評してください。ドキュメンタリー中にもあるように、グロピウス設計のこの建築は、竣工するやいなやヨーロッパ中から注目され、同時にナチスや共産党など時の権力者たちからは忌み嫌われました。現在では20世紀を代表する建築物として、世界遺産にも登録されています。いったいなぜこの建築がそれほど人々の関心を集め、評価されるのか。その理由を自分なりに考えて書いてください。 これも全員ぶんコピーして配ります。そんで一人一人私がコメントする。「同じものを見ても着眼点は人によってこれだけちがう」「批評は感想とちがう」ことを感じとってもらえたらしめしめです。 ●前期試験 記述式テスト、問題は事前発表 問1 これまで実際に自分の目で見た建築の中で、印象に残ったものを一つ選び、その建築について批評文を書いてください。 問2 あなたの好きな建築家、インテリアデザイナー、アーティスト、映画監督等、視覚芸術系のクリエイターを一人選び、その人物の人物評を書いてください。 好きな建築やデザイナーのことを書くとなると、つい感情が先立った主観的な「感想文」に陥りがちですが、その建築や人物のどこがどう評価できるのか、自分はなぜ素晴らしいと思っているのか、他人を納得させられるだけの客観性と論理性を保った「批評文」であってください。かといって客観的な事実だけを並べた説明文で終わらないように。 【×】NGワード「とにかくすごい」「見ないとわからない」「ぜひ実際に見てほしい」 基本的にはほぼ去年と同じですね。80分で各問A4用紙1枚ずつです。レポートでなく筆記試験なのは、ネットで拾ってきたコピペの束を読む羽目になるのを避けるためです。資料の持込みを禁止しているのは、たとえ他人の受け売りであっても、必ずいっぺん自分フィルターを通して、自分の言葉にしてから出力してほしいからです。 試験は来週です。おもしろかったらここで発表しようかな。 |