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5月 28日 月 | ▲ . |
『群像としての丹下研究室』(オーム社)刊行記念トークイベント 丹下健三研究室の構想力――彼らが目指した「建築の〈本義〉」とは 北山恒×豊川斎赫×南後由和 2012年05月27日(日)19:00〜青山ブックセンター ……きのう聴講。面白かった。本はまだ読んでないのですが、イベント自体の感想を軽くメモ。 著者の豊川さんが話された内容をものすごくざっくり要約すると、こんなかんじ。 「丹下研究室が現代の都市に及ぼした影響や、その先進性を、浅田孝の業績(横浜の六大事業)とか、東大都市工の設立のエピソードとかから解説」 驚きポイントを挙げておこう。 ・東大の都市工学科、丹下健三が設立したとは! ・藤森照信さんの大著『丹下健三』を読んで、「これなら重なるテーマで博士論文を書いても大丈夫」だと思った、という話にぐっときた。藤森さんの建築史の「人物中心主義・物語主義」へのカウンターという意識もあったのかな。 ・会社辞めてわずか9ヶ月で博士論文を書いたって言ってた気が。空耳かな……? 空耳だといいなあ。 ============== 北山恒さんがゲストということもあって対話では横浜の都市計画について触れられていました。そこで『群像としての丹下研究室』を読む前に、積ん読になっていた『都市ヨコハマをつくる』田村明を読んでみた。……この本は面白いですね。 ・いきなり市役所の企画調整局のレイアウトの話からはじまる。「情報をどんどん共有し、発言をさせ、一緒になって考えれば、若い人たちは自らやる気をだしてくるものである」というワークスペース論。 ・次が高速道路地下化“ステルス化”計画の章。「都市づくりは大きなドラマである。だが、過ぎさってしまえば、それが日常性の中にとけこんでしまう」という都市計画ステルス論。 ・そして浅田孝が骨子を考えたという六大事業がなぜ“事業”なのか。「総合計画、長期計画ではいろいろたくさん書いてあるが、印象が不鮮明」「プロジェクト方式では、内容が具体的であり、忘れることはできないから、人々を巻き込むことができる」 ・横浜スタジアム建設の資金に困り、窮余の一策として配当なしの“オーナーシート制”を発案。「250万円(500円株を5000株)を出資した人には、半永久のプロ野球オーナーシートを一席提供し、広く資金を集めようというものである」。 ……など。 六大事業の発表が1965年、横浜市に企画調整室ができたのが1968年ですが、それなりにいろいろ出揃ったのは90年代から2000年代という感じですね。市営地下鉄とか、ベイエリアとか。いまある都市ヨコハマの裏に恐ろしく気の長い計画があったことがよくわかります。 しかし、ここまで明快にはっきりした主語で、具体的な都市の計画を語っている本というのは、なかなかないのかな。何しろまちづくりにはいろんな主体が関わっているので「ワシが育てた」といえる人がいないのではないか。ボトムアップ型が強調される最近は、たぶんいっそう控えめなのでは……。 こういう都市計画とか組織的な動きにある控えめで「ワシ(代表者の顔)」を出さない傾向はすばらしい思いますが、そうすると名前を出せるものばかりが語られてしまう……建築とか。丹下研究室のしごとが建物とか、都市計画(案)とかを軸に語られがちな理由もそのへんにあるのかと思うと忸怩たる思いを(勝手に)抱くのであります。 |