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2月 3日 金 | ▲ . |
この1月号から日本建築学会の定期刊行誌『建築雑誌』の文章まとめをちょくちょく手伝ってます。「編集方針」にある「建築という『学・術』をめぐる広範なアソシエーションの探求」の言葉通り、分野を横断し拡張する特集や記事がつくられており、いちいち聴き応え、まとめごたえがあります。 1月号は出てからだいぶ経ってしまったので最近届いた2月号のことを振り返ってみます。「津波のサイエンス/エンジニアリング」という特集です。 東日本大震災の津波を報じる映像の数々や、建物が流されて土台だけになってしまった地面をみて、わたしは建築の限界を感じたものです。震災の後「津波から地域を守る防潮堤などをつくるのは我々の仕事ではない」と建築の無力さをはっきり語る建築家もおり、そこにもやっと疑問を感じつつも、津波のことは「それはさておき」と視野の範疇から外して見ていたのが正直なところです。 しかし建築ボケした私の思い込みは、最初と最後、2本の座談会を聞かせてもらって氷解しました。津波はこれまで建築の世界でスルーされ気味だっただけ。しっかり建築学の範疇です。 まとめ作業の中で印象に残った2つのポイントを要約。 ・2005年に登場した、津波避難ビルのガイドライン。これが現状唯一の建築物に対する耐津波設計指針。漂流物への対応が考えられてないなど再考の余地あり。かつ、あくまで指針なので今ある津波避難ビルがこの基準を満たしてるわけではない。(それどころか、通常の耐震基準すらあやしいという発表もあったね……報道発表資料「津波避難ビル等」に関する実態調査結果について)まあいろいろやれる余地あり。 ・レベル1(100年に一度レベルの津波)には防災、レベル2(1000年に一度レベルの津波)には減災、という津波対策基準が公になる予定。1000年に一度レベルのすごい津波は防潮堤を超えてくるので、そこは建築物も頑張らないとならない。”粘り方”や”受け流し方”は考える余地あり。 なお巻頭座談会は土木工学の研究者/実務家が中心で、寄稿されている方も土木工学や地震工学の研究者がほとんど。その人選意図は巻頭言参照なのですが、雑誌の編集方針に掲げられた「建築という『学・術』をめぐる広範なアソシエーションの探求」をさっさと実践なされているのがすごいなと思う次第です。 |