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縁あって、アート・アンド・クラフトという設計事務所兼不動産屋さんの中谷さんに会いに行きました。一年ちょっと前に、建築な雑誌多発期に創刊されたLiVESという雑誌で記事を見かけて以来、かなーり気になっていた事務所です。焼き肉で餌付けされたから言うわけじゃないけどすごく革新的な試みをしているのですね。 何しろ設計事務所が不動産屋まで兼ねてしまうのが素晴らしい。建築を実際に売るところまで関わっているというのはいいですね。われわれはこう見えても社会派であり、今の日本のいわゆる建築ってやつが経済論理に乗っかっていないことをすごく歯がゆく感じていて、そういうもんだいに取り組んでいるというのは素晴らしいなあと、こう思うわけです。しかもやってることはマンション・長屋に倉庫の再生と、今注目のストックリノベーション。もう方向性としては完ぺきだ。 で、会いに行ったらやはりさすが経済原理に乗っかっているだけあって、事務所はちゃんと夜終わるらしく、6時にはからっぽでした。これは革新的! あと事務所には模型とかが落ちていない。そういう意味ではかなり一般のアトリエ事務所とは違います。 あとショールームの存在もいいですね。建築家はあんましショールームとか作らないみたいだけど、お客さんからしたらちゃんと店構えみたいなのがあるとかなり安心できるはずなのです。 中谷さんは京都工繊大出身で、バブル時代に不動産屋さんで働いていたらしいです。このあたり、絶妙なプロフィールだと思いました。 なにしろ工繊大というのはイメージ的に悪い要素が一切なくて、アカデミズムの仲間になることもできるし、でっかい会社にも入れるし、プロダクトの学科もあってグルービジョンズみたいな全方位型デザイナーにもなれるし、とにかく何にでもなれる学校なのだ。でも単科大学だから商売というイメージは無い。そこで不動産屋という経歴が異色なのだ。このあたりが、高邁な理念に裏付けられた建築家マインドを持ちつつお商売もうまいという、いそうでいないキャラクターに結びついているのだな、という気がしました。 (*2020年、一部文章に修正を加えました。) |
中谷さんとの面談についていくつか。 建築家が不動産屋を兼業して何が良いかというと、まず作ったものを見せてから売れるということです。できちゃったものを見せる方が100の言葉とCGと模型よりも100倍伝わるのはアタリマエだ。これからはプレタポルテだよなあと言ってとりあえず家具とか作って売ってるそこのお兄さん、宅建取れば家も作って売れます。 あと、これから増えるに決まってるリフォームだのリノベーションだのの仕事はふつうにやっても儲かりっこありませんが不動産と一緒にやればちゃんと商売になるということです。いい感じに腐ってるボロい建物がつまらんマンションに建て替わっちまうのを歯がゆい思いで見ていただけのそこのお姉さん、宅建持ってればアナタがディベロッパーになれるんですよ。なんか資格学校の宣伝みたいになってきた。 そういうわけで今から建築やろうと思ってる人はだまされたと思って不動産も勉強するといいと思いました。これはふだんろくでもないことばかり言っているわれわれがごくたまに言うごくわずかな「ろくでもあること」の一つにちがいないのでまじめに聞くように。 あとオープンハウス(*)に対する意見がすばらしかった。 「オープンハウスするんやったらチラシ配って近所の人にも見てもろたらええやん。20人か30人か来てくれたらもしかして1人ぐらいはああええなあ、うちもこんなん頼もうかな思う人がいるかも知れへんやんか。なんで建築家仲間しか呼ばへんのかなあ」 ああまったくその通りだ。簡単にできることなので仕事の欲しい若手諸君は今すぐ真似するといいと思います。 (*)住宅が完成したときおもに建築家が関係者を招いておこなう内覧会のことだ 關聡志さんにも感じたことですが、とことん合理的な発想と現実的な知恵、夢はあっても夢のようなことはいっこも言わないあたりがさすが関西人。大阪で商売成り立たせてる建築家(プロフェッサーアーキテクトじゃなくて)の才覚ってスゲエよと関東人のわたくしなんかは思うわけだよ。 |